新年明けましておめでとうございます。
NPO法人 THOUSAND-PORT 代表の鈴木です。
本年もよろしくお願いします。
 

近年の恒例ともなりましたが、今年も新年のご挨拶に代えて、年末年始に読んだ本からインスパイアされたことを書きたいと思います。
今年は、『他者と働く 「わかりあえなさ」から始める組織論』宇田川元一 著 です。
 
まず最初に、タイトルに引用した表記の出展元の正確な記述を紹介しておきます。
 
”対話に挑むことを別な言い方をするならば、それは組織の中で「誇り高く生きること」”
 
この本は組織における他者との「適応課題」を「対話」で解決する為のプロセスが書かれていますが、所謂技術的な話は少なく、寧ろ上記のような「なぜ対話が必要なのか?」についての理解を深めることに紙幅を割いていて、数多くの心を打つフレーズがありましたが、最も私の心を打ったのは上記のフレーズでした。
 
本の中では文字通り組織論というか組織開発の文脈で書かれていたのですが、「組織の中で」を「社会で」あるいは「人生を」と言い換えてもその意味は変わらないどころか、「なぜ対話が必要なのか?」もしくは、「なぜ”わかりあう”必要があるのか?」をより本質的に言い当てています。(また、この本の「おわりに」を読むと、この著者が単なる組織論の範疇を超えて伝えたい動機がわかります)
 
ここで上述の「適応課題」という言葉について説明しておくと、これはハーバード・ケネディ・スクールでリーダーシップ論を教えていたロナルド・ハイフェッツの定義したもので、我々が退治する問題を、既存の方法で解決できる「技術的問題」と既存の方法で一方的に解決ができない複雑で困難な「適応課題」の2つに分けています。
 
多くの組織開発、人材開発、キャリアデザインについての書籍、研修ではこの「技術的な問題」について、「魔法のような秘密兵器」を授けるようなものが多く、その武器を次から次に試すものの、どうしても「こんなはずじゃない」結果しか得られず、徒労感や諦めに覆い尽くされるような気分を味わった人もいるのではないでしょうか? かく言う私もその一人です。
 
しかし、この本でも述べているように、”「武器」でなぎ倒されたあとに残るのは(中略)「都合の悪い問題」ばかり”で、そんな「都合のいい問題」は残っていないし、それこそが私がNPOを立ち上げた理由の一つでもあるのです。
 
社会は多様で、複雑で、不確実で、混沌としています。
それを「わかりやすく」示し、その処方箋を断定口調で述べるのは、それを発信した側だけでなく、受け取った側の気分も高揚、もしくは安心させてくれます。
でも、その様に社会を単純化することは、「私(たち)とそれ以外(他者)」に還元することに繋がり、ひいては「正義と悪」「勝者と敗者」(この本でも言われている)「私とそれ」に分断する誘惑を孕んでおり、その二項対立に橋をかけるのが「対話」なのです。
 
私達のNPOはまさにこの「対話」の機会を組織開発、人材育成、キャリアデザインなどの文脈で様々なカタチで提供しています。
今年も私達は人間に与えられたこの「言葉」を、他者との分断や指弾の為ではなく、「私と他者を含む全て」の統合と共生の為に、豊かな「対話」の機会をつくっていきます。一人ひとりが「誇り高く生きること」に繋がると信じて。
 
今回インスパイアされた本はこちらです

※アイキャッチの写真は、来年度から開始予定の事業をLEGOでカタチにしたものです。詳細は別途発信していきます。