【事例紹介】順天堂大学|キャリアデザイン・ワークショップ

順天堂大学の新一年生の「キャリアデザイン演習」という科目で、「キャリア探索における 非言語的ツールによる自己理解促進効果の基礎的検討」という研究テーマに沿ってワークショップを実施しました。
キャリアデザインのスタートは自己理解ですが、そのためには良質な「問い」が必要です。しかし自分自身が立てる「問い」は、やはり自分の思考や価値観の枠に留まってしまいます。

レゴ(R)シリアスプレイ(R)メソッドを用いた「対話」では、ファシリテーターからだけでなく「作品」がチームのメンバーからの様々な「問い」をごく自然に生み出していきます。それは良質な問いに出会う機会でもあり、そしてそこから生まれる深い「内省」のトリガーにもなりうるのです。

今回は、ワークショップの一連のプロセスをご紹介します。


「スキルビルディング」セッション

これは、レゴ®シリアスプレイ®メソッドを用いたワークショップでは必ず実施します。
本来はブロックの組み立てや「作品についてのストーリーを語る」ことに慣れてもらうことを目的としていますが、このワークショップでは本題のWORKにも一部踏み込みんだ内容となっています。
 
【スキルビルディング ①-1】作品制作セッション
“あなたが「登ってみたい」と思えるような『タワー』を、できるだけ高くつくってみてください”
これは、ブロックの基本的な組み立て方を身につけながら、あえて短い組み立て時間を設定することで「手で考える」体験をしてもらいます。(この「手で考える」ことの意味や効果はマシュマロチャレンジの実験でも形を変えて述べられていますね)
 
【スキルビルディング ①-2】ストーリーテリングセッション
ここでは、”この作品が「大学生活で成長した1年後の私」だとして、チームのメンバーに説明して下さい”
という問いを投げることで、「タワー」を「成長」のメタファーとして、「未来の記憶」を語ってもらいます。
少し漠然とした未来の自分がビジブルになることで、will と must が少しづつ顕在化されていきます。
 
【スキルビルディング ②-1】作品制作セッション
ここでは、”目の前の作例から、『なんとなく気になった』作品を選んでつくってください”という問いかけに対して、作品を制作します。
作例にしたがって制作することで、自然と少し高度なブロックの組み立て方(例えば、ブロックのポッチに棒状のブロックを挟み込んで立てる、など)を身につけることで、今後の本編での表現の可能性を拡げます。
 
【スキルビルディング ②-2】ストーリーテリングセッション
ここでは、『他己紹介』をします。このあとの「本編」で安心して自己開示や質問をできるための相互理解も兼ねたセッションです。
 ”あなたの『隣の人』のことを、『隣の人がつくった作品』を使いながら、チームのメンバーに紹介して下さい”という問いを投げます。
また、「他己紹介」の手法を取ることにより、「自分には見えていない自分(blind self)」に気づくプロセスでもあります。

「WORK」セッション

ここからがいよいよメインのセッションとなります。
スキルビルディングがうまく行っているほど、内省と気付きが深まります。

【WORK①-1】作品制作セッション
ここでは、”これまでに、もっとも達成感を味わった瞬間の「ワタシ」をつくって下さい”との問いを投げます。
自身が普段無自覚/もしくは忘れかけているコンピテンシーをまさに「手の記憶」により目の前に出現させます。

 

【WORK①-2】ストーリーテリングセッション
ここでは、以下についてシンプルに言語化していきます。
 その瞬間とは、いつの?どんな出来事ですか?
 その時発揮されていたあなたの「強み」は?
 そして、その時の気持ちを「一言」で言うと?
その時の瞬間を深く味わうことにより、すでにあるリソース、強さ、可能性を再発見し、自己肯定感・自己効力感を高めます。

【WORK②-1】作品制作セッション
ここでは、”○年後、今テーブルを囲むメンバーで、あるプロジェクトに臨んでいます。その時の『チームに貢献している私』をつくって下さい”との問いを投げます。
これまではあくまで「個」としての自分について考えてきましが、ここでは「組織やチームの一員」「全体の一部としての私」の視点を与えます。
個人としての能力や技術も大切ではあるが、社会を変える、ゲームのルールを変えるためには、チーム力が不可欠であり、チーム力が高まるとは即ち多様な個の相互作用であることの気づきを得ます。

【WORK②-2】ストーリーテリングセッション
ここでは、”「既にある強み」と、更に自身がこの4年で「新しく手に入れるリソース(能力・知識・ネットワーク等々)」について触れながら、○年後の「チームに貢献している私」を表現してください”という問いを投げることで、目の前の自身の到達イメージ、ありたい自分には既にあって、今の自分にはまだないリソースを言語化します。
誰かに指摘されるのではなく、他者との比較ではなく、「自分のものさし」でそのリソースを選び出します。

【振り返り(リフレクション&シェア)】
ここまで、言語化してきたをワークシートに改めて文字に起こして可視化するとともに、チームのメンバーにシェアをすることで、受容される経験、もしくは「宣言」することによるコミットメントを得るとともに、自身とは異なる考えを否定することなく取り入れ、自身と他者への寛容さをも手にします。


参加者の声

参加者のほぼ全員がはじめて体験した、レゴ®シリアスプレイ®。
参加前は半信半疑だったみなさんも、そのパワフルさに驚きと手応えを感じたようです。