新年明けましておめでとうございます。
NPO法人 THOUSAND-PORT 代表の鈴木です。
本年もよろしくお願いします。

年末に読んだ「LIFE SHIFT」が、これまで私が漠然と感じていたことを言語化してくれたので、
今の私の「実験」内容と経過報告をさせて頂くことで新年の挨拶と代えさせていただきます。

”寿命が100年になる”

これだったのか。
教育機関で学ぶ内容や制度、会社の定年制度、年金制度、それらの現状の社会との不整合は感じていたものの、
決定的な理由を自分の中で言語化出来ていなかった。
しかし、この ”寿命が100年になる” との一言で説明できてしまった。

現在の諸制度は人間の平均寿命が30-40歳台だった頃に構想されたものだ。
そこでは一度手にしたスキルが陳腐化する前に、寿命を迎えたし、
「定年」する前に多くの人が亡くなるであろうことが織り込まれていたであろう。
そして、医療や食生活の向上よって、劇的に寿命が伸びたものの、社会制度や教育機関、企業は
当時の設計思想のまま、今に至っている。

しかし、身近なところで小さいけれど確実な変化が起きている。

私の家内(NPOの理事でもある)は現在も出産前と同じ企業に勤めている。
非常に優秀で勤勉であり、組織内でのバランス感覚にも優れている。
そんな彼女だが、これまで「共働き」を選択する小さくない動機は就職氷河期の原体験から来る「リスクヘッジ」だった。
(私の起業の有無を問わず)夫婦の一方の収入で家族の生活を設計するのは余りにリスクが高いと考えていたのだ。

だが、育休が明け、復職してからはその考えが少し変わってきたようだ。自身を
「時短で働きながらも、これまでと同等以上の労働価値を提供する女性」として再定義するとともに、
その実験の被験者としての挑戦をはじめた。企業の制度に生活を適応させるだけではなく、
「新しい社会」の有力なオプションとなりうる働き方を創造しようとしているのだ。

そして、私(と私の息子)は彼女のチャレンジを全力で応援している。
具体的には、一昨年、昨年と「育児」を自身の最優先事項にしている。
これは「イクメン」の啓発とか「女性の活躍」を後押ししたいということもさることながら、
この本にあるように、
「100年生きることを前提とした夫婦の、ステージの変化に伴う最適な役割分担」
だと考えるからだ。

具体的には、私は昨年ほぼ毎日18:00までしか働いていない。
それ以降は保育園から帰ってきた息子の食事の用意や入浴など充て、既存の社会通念とは異なる仕方で、家事と育児の分担をしている。
しかし、寧ろ生産性は高くなったと感じている。
多くの事を「やらない(一時休止)」と決めたことも大きいだろう。

勿論、ここに上げた事例(実験)が”正しい”と言うつもりはない。
また、既存の制度の風景しか見えない環境にいる人にとってはアノマリーに映るかもしれない。
しかし、そんな働き方改革も、誰かがチャレンジすることで知見が集まり挑戦する人も増えてくる。
挑戦する人が増えればその知見は社会的なリソースとなり、家族のあり方や、働き方のオプションとしてのリアリティが高まるだろう。

LIFE SHIFTの最終章に、リンダ・グラットンは
「変化の担い手は?」という問いを立て、みずからこう答えている。

”その担い手は私たちだ。
長寿化の試練とチャンスを前にして、個人や夫婦、家族、友人グループが実験し、既存のやり方を壊し、それを再構築し、意見を交わし、議論を戦わせ、いらだちを覚える必要がある”
既存の社会を前提にするとたじろいでしまうこと、不可能に見えること、愚策に思えることも、その前提を疑えば「新しい社会」における一つの貴重なリソースとなるかもしれない。

今年も、私たちTHOUSAND-PORTは「新しい社会」の担い手達と同じ風景が見える場所に立ち続ける為、メンバー個人個人が絶え間ないチャレンジをし、その結果を各事業を通しシェアし続けたい。